古楽とストラヴィンスキー 木佐貫邦子×平山素子

新国立劇場 中劇場
2008年11月15日(土)15:00
コンテンポラリーダンス ダンステアトロン No.16

古楽ストラヴィンスキー
木佐貫邦子×平山素子


第一部「キャラバン」
演出・振付:木佐貫邦子
美術:島 次郎
音楽構成・作曲・オペレート:スカンク(NIBRILL, MEXI)
出演:木佐貫邦子 近藤良平 福留麻里 入手杏奈


第二部「春の祭典
演出・舞台美術原案:平山素子
振付・出演:平山素子、柳本雅寛
音楽:ストラヴィンスキー
ピアノ演奏:土田英介 篠田昌伸
美術作品協力:渡辺晃一


第一部は、あたたかいオレンジ色
第二部は、厳しいグレー
なイメージだった。



そもそも、コンテンポラリーやモダンダンスに、さして造詣があるわけではない。
ライブもほとんど見たことない。


木佐貫邦子さんは、以前たまたま一度だけ、ライブでちら見したことがある。
小さい劇場で、玉石混淆なフリーダンス。
その中のひとりが木佐貫さんだったのだが、もう明らかに周りと違う大きなオーラを発していた。
残念ながらその舞台では、木佐貫さんの番に若い人が乱入してきて(それもまたありな設定なのだが)、結局しつこく挑戦してくるその若い人に場を明け渡して、あっさり去ってしまわれたので、ほとんど踊りを見ることができなかった。
それにしても、ちょっと腕を動かしただけで、場を取り込むあの大きさ。
もっと見たかったという心残りが、そもそも今回初台に足を運んだ原動力だった。


平山素子さんといえば私の中では、兵庫県立芸術文化センターニジンスキー版『春の祭典』生贄の乙女を踊った人。
その公演、見たかったけど見に行けなかった。
最近では、北京五輪のシンクロデュエットの振付もされたとか。


その二人の公演ということで、忙しいが行かねばなるまい、と心待ちにしていた。
新国立劇場まで、うちからチャリで15分。
当日券Z券、1500円也。
・・・どうしてたったこれだけで非日常の世界に飛べるのに、なかなか行かれないんだろう。


新国の中劇場、初めて入った。
ほどよい大きさで、2階のすみっこでも舞台が近くて、見やすかった。
一部も二部も、チラシの衣装とは随分雰囲気が変わっていた。

第一部。

歌付きの陽気な古楽に載せて、4人のダンサー。
木佐貫さん、近藤さんはもちろんよかったけど、入手杏奈さんという若い人がよかった。
キレがあって、のびのびしていて、とても気持ちの良いダンサー。
もともとクラシックの人なのかな?という感じ。


全体にあたたかい、まあるいダンスのように感じた。
題名の「キャラバン」は、同じ風と光を受けて身体の奥地へ進む、ある4人のキャラバン、という意味だそうだ。


舞台奥に、一本の枯木。少しだけ登場するランタン。
4人は家族のようでいて、それぞれが一人。
木佐貫さんが、夫と娘たちを守る、お母さんにも見える。
時に同調し、それぞれが関わり合い、寄りかかり合い、別々に走る。

第二部。

一転して、舞台奥に2台のグランドピアノ。
ダブルピアノによる、ストラヴィンスキー春の祭典』(The Rite of Spring)。
通常はオーケストラで演奏される曲だが、シンプルにピアノで演奏される分、より鋭角で、しかしこの曲の威力(暴力性)をやや抑えた感じだった。それだけに、踊りによってその抑えられた部分が発散されるように感じた。


白い、切れ切れのワンピースのような衣装、きりっとまとめた髪の平山さん。
同じく白の衣装の柳本さん。
舞台は黒地に、白ペンキをぶちまけたような。


この曲は、古今東西さまざまな振付家によっていじり尽くされている。
ニジンスキーに始まり、もっとも有名なのはベジャールピナ・バウシュ
個人的にはプレルジョカージュのも好きだ。
だけどやっぱりいずれにも共通するのは、かならず「男」と「女」によって語られるということ。それが間違いなく、この曲の根源的なところなのだろう。
いずれの部分も重苦しく魅惑的。
その曲に新たに振り付けるってことは、相当勇気の要ることなのだろう。


後半は黒(ダークグレー)の衣装。
平山さんの踊りはすごい。
そもそもの身体能力がハンパない。
乗っかる、振りまわす、ぶつかる、ころがる、それもとてもやわらかく。
一体どんな筋肉してるんだ・・・。


チラシの写真よりずっと、シンプルでアクのない印象だ。
ただ、平山さんがすごすぎて。柳本さんももちろん上手いけど。
今までの春の祭典の印象と、同じようで全く違う。
もっとリアルな(プレルジョカージュみたいな「現代のリアル」とは違う)、でも生々しくない。



プログラムの平山さんの言葉を引けば


やがて生成される偶発的接触が音の洪水と交錯し誕生する生命美(セクシュアル・ファンタジー)を描き出したい。
これは有限の中での永遠を喚起する瞬間である。

と。





どちらもすごかった。
見てて、座ってるだけなのに汗かいた。
行ってよかった。
明日も行けるものなら行きたいが、打合せがあって行けません・・・