毛沢東のバレエダンサー』から「紅色娘子軍」

zow132010-07-02

先回の日記で紹介した映画の原作、リー・ツンシン(李存信)著『毛沢東のバレエダンサー』をすごい勢いで読んでいる途中。まだ読了前だが、思いついたことをメモしがてら、ちょっと調べてみたことをば。

毛沢東のバレエダンサー

毛沢東のバレエダンサー

1961年生まれの著者は、山東省青島の貧しい農村に生まれ、11歳の時に選ばれて北京舞踊学院に入学。以後7年間学び、1979年に研修のため渡米。1981年に亡命、ヒューストン・バレエ団のプリンシパルとなる。


著者の少年時代は大躍進政策の後、文革のさなか。北京舞踊学院の創立が江青指導の文化政策に絡むものだったとは、初めて知った。当時の中国におけるバレエはあくまで、革命、政治哲学の啓蒙に係るメディアのひとつであって、今我々が思う西側のバレエ芸術とは相当異なるものであったようだ。


旧ソ連のバレエにも政治色の強い作品が多数あるが、それらが今なお上演され続けているわけではない。先日「明るい小川」が復古上演されて話題を呼んだぐらいだ。中国バレエのすごいところは、現代においてもそういった作品を上演し続けているところである。というかむしろ、そっちが本懐であるとすら(表面的には)言ってそう。李氏の本に登場する作品名「紅色娘子軍」「海羅紗」などはいずれも政治的な作品で、李氏いわくバレエ学校に入学して6年目で初めて「くるみ割り人形」を見たとかで、それまで自分が知っていたバレエとはあまりに違って衝撃を受けたそうだ。したがってそれまで彼が知っていたバレエの世界とは、ステップこそ外来のものであるけれど京劇や古典舞踊と同じく、いやそれ以上に思想や政治を表現する劇、であったらしい。



紅色娘子軍」は1930年代の海南島における女子特務連隊の実話をもとに、国民党系反動地主を倒すために立ち上がった女性農民の姿を描いたバレエ。1962年にバレエ映画上映、1964年に舞台バレエが北京・天橋劇場で初演、京劇版映画もつくられた。「海羅紗」は国民党軍によって両親を絞首刑に処された兄と妹の物語で、毛沢東軍のおかげで両親を殺害した人々に復讐を果たすというストーリー。
といっても「西側バレエ」のイメージしかない我々には、そんな題材がどうバレエになるのか想像もつかない。以前、旧ソ連のバレエ「赤いけし」についてちょっと調べたが、なぜ演劇でも唄でもなく、バレエでやろうと思うのか、がわからない。だってトゥシューズ履いて軍服って、そりゃおかしすぎでしょう。エンターテイメントの要素と、華やかさだろうか?あるいは難しい言葉なしに、見たままで伝わるからか?



で、動画を探してみた。
こちらは最近のもののよう。テレビ放送用に撮影されたもののようで、魅入る観客の姿が興味深い。すごい衣装だ。。。ダンサーの現代的スタイルと、人民服風、ゲートル風衣装のギャップがすごすぎる。

こちらはもう少し古いもののようだが、ダンサーはすごい。赤い服のが、主役の呉瓊花だろうか。コールドバレエの布陣、構成がバレエというより中国舞踊を見てるよう。


社会主義系バレエ作品については、また機会があれば調べてみよう。『毛沢東のバレエダンサー』自体の感想ものちほど。